When the Site Engineer Leaves
営業所技術者(専任技術者)が辞めたら——2週間でやること
営業所技術者は、建設業の許可を支える柱の一人です。辞めると決まった時点から、会社には2週間の期限つきの宿題が生まれます。後任がいる場合といない場合に分けて、やることを順に並べます。
営業所技術者(2024年12月までの呼び名は専任技術者)が辞めたら、2週間以内に届け出ます。後任がいればその人の証明書(様式第8号)を出し(法11条4項)、後任がいなければ要件を欠いたことを様式第22号の3で届け出ます(法11条5項)。後任がいないままだと、その許可は取り消さなければならないと法29条が定めています。実際には勤めない人の名前を借りる「名義貸し」は、虚偽の届出です。後任が見つからない業種は、一部廃業で整理する道もあります。
まず結論——後任の有無で出すものが変わる
建設業の許可は、営業所ごとに営業所技術者を専任で置いていることが条件です(法7条2号)。令和6年12月13日の改正で条文の呼び名が変わり、それまでの「専任技術者」がいまの営業所技術者です。求められる中身は変わっていません。手引きには「営業所技術者等(専技)」のように旧称を添えているものもあります。
その人が辞めたとき、期限は2週間です。何を出すかは、代わりの人がいるかどうかで分かれます。
| 後任がいる | 後任がいない | |
|---|---|---|
| 根拠 | 法11条4項 | 法11条5項、規則10条の2 |
| 出すもの | 後任についての営業所技術者等証明書(様式第8号)と、要件を示す書面 | 基準を満たさなくなった旨の届出書(様式第22号の3) |
| 期限 | 2週間以内 | 2週間以内 |
| 出さないと | 法50条1項2号(6月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金) | 法50条1項3号(同じ重さ) |
許可に係る建設業者は、営業所に置く営業所技術者が当該営業所に置かれなくなつた場合又は第七条第二号ハに該当しなくなつた場合において、これに代わるべき者があるときは、国土交通省令の定めるところにより、二週間以内に、その者について、第六条第一項第五号に掲げる書面を国土交通大臣又は都道府県知事に提出しなければならない。
見落としやすいのは右の列です。後任がいないから届け出るものが無い、とはなりません。要件が欠けたこと自体を、自分で届け出る作りになっています。罰則は会社にもかかります(法53条の両罰規定)。
2週間は、辞めた日の翌日から数えます。退職日が先に決まっているなら、その日までに後任の書類をそろえておくのが理想です。
後任がいないとどうなるか——法29条の取消し
営業所技術者を置けていない状態は、許可の基準を満たしていない状態です。建設業法は、この場合の取消しを行政庁の裁量にしていません。
国土交通大臣又は都道府県知事は、その許可を受けた建設業者が次の各号のいずれかに該当するときは、当該建設業者の許可を取り消さなければならない。
一 一般建設業の許可を受けた建設業者にあつては第七条第一号又は第二号、特定建設業者にあつては同条第一号又は第十五条第二号に掲げる基準を満たさなくなつた場合
特定建設業では、営業所ごとに置く技術者の基準が法15条2号(特定営業所技術者)になります。一般より要件が重いので、後任探しもそのぶん難しくなります。
行政庁の手引きも、空白をつくらないよう強く注意しています。
なお、常勤役員等や営業所技術者等が常勤・専任でいることは、許可を受けた建設業者として満たしていなければならない基本的な要件です。代わるべき者がおらず1日でも空白期間が生じた場合には、許可が失効することとなりますので、ご注意ください。
大阪府は「失効」と書いていますが、条文の上では法29条1項1号による取消しです。どちらの言い方でも、後任が決まるまでの間を空けてはいけないという点は同じです。
いいえ。許可を受けられない5年間(欠格要件)が付くのは、不正の手段で許可を受けた場合(法29条1項7号)や情状が特に重い場合や営業停止処分に違反した場合(同項8号)の取消しに限られます(法8条2号)。要件を欠いたことによる取消し(同項1号)はここに入っていません。条件をそろえ直せば新規で申請できます。ただし手数料は新規の額で、許可番号も変わります。
後任になれる人か——要件の確かめ方
後任の候補がいても、その業種の営業所技術者になれる人かを先に確かめます。法7条2号は、次のどれかに当たる人を求めています。
| 区分 | 中身 | 主な証明書類(規則3条2項) |
|---|---|---|
| イ 学歴+実務経験 | その業種に関する指定学科を修めて、高校・中等教育学校卒業後5年以上、大学・高専卒業後3年以上の実務経験 | 学校の卒業証明書と、実務経験証明書(様式第9号) |
| ロ 実務経験 | その業種の工事について10年以上の実務経験 | 実務経験証明書(様式第9号) |
| ハ 大臣が認めた人 | 資格者など。業種ごとの一覧は規則7条の3(例:建築工事業なら1級・2級建築士、建築施工管理の1級または2級(建築)の第2次検定の合格者) | 資格を証する書面(合格証明書など。何を出すかは手引きで確認)、監理技術者資格者証の写しなど |
- 業種が合っているか……辞めた人が複数の業種を担当していたなら、後任がその全部をカバーできるか。できない業種が残ると、その業種だけ後任がいない状態になります
- どの営業所の担当か……営業所技術者は営業所ごとに置きます。支店の技術者が辞めたなら、その支店に置く人が要ります
- 一般か特定か……特定建設業の業種なら、法15条2号の要件(大臣が定める試験の合格や免許、または一定規模の元請工事での指導監督的な実務経験など)で確かめます
- 実務経験の証明がとれるか……10年の実務経験で要件を満たす人は、その期間を証明してくれる勤め先が要ります。前の勤め先の協力が得られるか、早めに確かめます
資格の組み合わせと実務経験年数の細かな組み合わせは業種ごとに違います。判断に迷うときは、提出先の手引きの「営業所技術者等の要件」の表で確かめるか、窓口や行政書士に相談してください。
「専任」と言えるか——常勤性の見られ方
資格や経験があっても、その営業所に常勤して専らその仕事をしていることが要ります。条文は「専任の者として置く」とだけ書いていて、中身は国の許可事務ガイドラインが決めています。ガイドラインは、勤務状況・給与の支払状況・人事権の状況などから判断するとし、出向社員でも条件を満たせば認めるとしています。
反対に、原則として専任と認められない例もあります。大阪府の手引きは次のような例を挙げています。
・住所が勤務する営業所所在地から遠距離にあり、常識上、毎日通勤ができない場合
・他の業者の経営業務の管理責任者や営業所技術者等、国家資格を有する常勤の技術者等
・建築士事務所を管理する建築士や宅地建物取引業者の専任の宅地建物取引士等、他の法令により専任を要するとされている者。ただし、同一企業の同一営業所である場合は兼任も可
・常勤している申請業者の営業所の他に個人事業を行っている者、他の法人の常勤役員である者等他の営業所等について専任に近い状態にあると認められる者
後任をパートや短時間の契約で迎えるとき、他社の役員を兼ねている人に頼むときは、ここで止まりやすくなります。常勤性をどの書類で確かめるか(健康保険の資格を示す書類、雇用の証明など)は省令に定めがなく、行政庁ごとに違います。提出先の手引きで確かめてください(→ 都府県の違い)。
名義貸しはなぜ違法か
後任が見つからないとき、資格を持つ知人に「名前だけ貸してほしい」と頼む話が出ることがあります。これはやってはいけません。理由は条文から三つ読み取れます。
営業所技術者は営業所に常勤して専任であることが要件です(法7条2号)。名前だけの人は、はじめから要件に当たりません
勤めていない人を営業所技術者として様式第8号を出せば、法11条4項の書類に虚偽の記載をして提出したことになります。法50条1項2号で6月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金、会社にも罰金(法53条)。許可申請書類への虚偽記載は同項1号です
不正の手段で許可や更新を受けた場合は、許可を取り消さなければなりません(法29条1項7号)。この取消しは欠格要件に当たり、取消しの日から5年間は許可を受けられません(法8条2号)
後任がいない状態を正直に届け出た場合(前の節)との違いは大きく、名義を借りたほうが結果はずっと重くなります。名前を貸す側にも響きます。大阪府の手引きは、他の業者の営業所技術者等になっている人を、常勤性が認められない例として挙げています。
後任が見つからないとき——一部廃業という選択
複数の業種の許可を持っていて、一部の業種だけ後任が見つからないときは、その業種をやめる届出(一部廃業)で整理する方法があります。残りの業種の許可はそのまま続きます。
| 手続き | 中身 | 期限・様式 |
|---|---|---|
| 一部廃業 | 会社として、その業種の許可を返す | 30日以内(法12条5号)。廃業届(様式第22号の4)(規則10条の3) |
| 技術者の整理 | 担当業種が無くなる人は削除、残る業種で引き続き営業所技術者になる人は変更 | 2週間以内。削除は様式第22号の3、変更は様式第8号 |
| 営業所の業種廃止(参考) | その営業所ではやめるが、ほかの営業所で同じ業種を続ける | 廃業届ではなく変更届(30日以内) |
関東地方整備局の手引きは、一部廃業のときは営業所技術者等の変更・削除の届出も同時に出すよう求め、廃業しない業種で引き続き営業所技術者になる人は、様式第22号の3ではなく様式第8号を出すとしています。さらに、他の営業所で同じ業種の営業を続けるなら廃業届は不要だと注意書きをしています。東京都の手引きも、営業所技術者の変更を伴う業種廃止・一部廃業は変更後2週間以内に届け出るよう書いています。
国の許可事務ガイドラインは、大臣許可について、廃業届が提出された日を許可取消しの日として扱うとしています。出したその日から、やめた業種では軽微な工事を超える工事を請け負えません。進行中の工事や見積り中の案件がないかを確かめてから出してください。
業種を一度やめても、要件を満たす人がそろえば業種追加の申請で取り直せます。手数料はかかります(東京都・大阪府の知事許可で5万円)。
経審と入札への影響
経審(経営事項審査)
- 許可が無くなった業種は対象から外れます。経審は、許可を受けた建設業の種類ごとに技術職員の数や完成工事高を見る仕組みだからです(「経営事項審査の事務取扱いについて」)
- 技術職員の数(Z)が減ります。審査基準日(決算日)より前に辞めた人は、その期の技術職員名簿に載りません
- 新しく雇った後任は、すぐには数えられないことがあります。技術職員として数えるのは、審査基準日以前に6か月を超える恒常的な雇用関係がある人です(同通達)。決算日の直前に採用した人は、その期の経審では数えられません
点数への響き方はP点試算で、技術職員の人数を変えて確かめられます。
入札参加資格
公共工事を元請で受けるには経審が要り(法27条の23)、発注者の入札参加資格も許可と経審を前提にしているのが普通です。多くの発注者は、許可を受けていることと、経審を受けて総合評定値を請求していることを申請の要件にしています(要件は各発注者の要綱で確かめてください)。許可や経審の内容が変わったときの届出は、建設業許可の届出とは別に、発注者ごとに出します(→ 入札参加資格)。
取消しのあと許可を取り直すと、許可番号が変わります。発注者によっては、許可換え以外の理由で許可番号が変わると、入札参加資格も変更ではなく新規申請として扱います。発注者ごとの扱いを確かめてください。
退職が決まってからの段取り
辞める人が、どの営業所の、どの業種の営業所技術者として届けられているか。控え(副本)で確かめます。経審の技術職員名簿にも載っているか見ておきます
資格・実務経験・常勤性の3点で確かめます。業種が全部そろうかも見ます
採用が退職日に間に合わない見込みなら、窓口に早めに相談します。空白を避ける手がないなら、一部廃業と技術者の削除を検討します
後任がいれば様式第8号と要件を示す書面。いなければ様式第22号の3。一部廃業なら廃業届(30日)も同じ封筒で出すと取り違えません
発注者の入札参加資格の変更届、次の経審の技術職員名簿、現場の許可票に書いた技術者名など
辞める人が常勤役員等(手引きでは経営業務の管理責任者等)も兼ねていたなら、そちらの届出も2週間以内です。取締役の退任なら役員の変更届(30日)も重なります(→ 変更届)。