建設業許可 実務ガイド 許可のあと — 決算変更届・変更届・経審・入札

Construction Record

工事経歴書(様式第二号)の書き方——経審を受けるなら「7割」を2回

決算変更届の中で、いちばん時間をかけるべき書類です。ここに書いた業種別の金額が、経審の完成工事高の土台になります。

まず結論

工事経歴書は許可業種ごとに1枚ずつ作り、前の事業年度に完成した工事と、決算日にまだ終わっていない工事(未成工事)を書きます。経審を受ける会社は、①元請工事を大きい順に元請合計のおおむね7割を超えるまで、②続けて残りの工事を全体のおおむね7割を超えるまで、③最後に主な未成工事、の順です。10件の上限は軽微な工事だけにかかります。金額は千円単位で、経審を受けるなら原則税抜(免税事業者の扱いは行政庁で違う)。最終ページの合計は様式第三号と一致させます。

01

工事経歴書は、決算変更届と経審の両方で使う

工事経歴書は、建設業法施行規則の様式第二号です。許可申請(法6条1項1号)のときに出し、許可を受けたあとは毎年の決算変更届(法11条2項)で出し直します。様式の見出しには根拠の条として第十九条の八も挙がっていて、経審の申請にも同じ様式を使うことが分かります。

使われる場面何のために見られるか
決算変更届1年間の工事の実績を報告する。閲覧所で一般に公開される(法13条)
経審業種ごとの完成工事高(X1)や元請完成工事高の裏づけになる。窓口では記載された工事の契約書などと照らし合わせる

決算変更届を出すときは「去年の記録」のつもりでも、数か月後の経審では点数の元として戻ってきます。業種の振り分けや金額を誤ると、経審の窓口で止まったり、決算変更届の訂正が必要になったりします。

書き方の決まりは「記載要領」にあります

どの工事をどこまで書くかは、条文の本文ではなく、様式第二号に付いている記載要領が決めています。記載要領は省令の様式の一部なので全国共通です。このページの引用は、令和8年7月1日施行の様式第二号(e-Gov掲載)によります。

02

書く範囲は、経審を受けるかどうかで変わる

最初に、自分の会社がどちらに当たるかを決めます。

経審(経営規模等評価)を受ける経審を受けない
完成工事元請だけで7割 → 全体で7割、の二段階(次の節)主な完成工事を大きい順に
未成工事続けて、主な未成工事を大きい順に続けて、主な未成工事を大きい順に
件数の上限軽微な工事だけ10件まで定めなし
様式第二号 記載要領3(2)

「経営規模等評価の申請を行わない者の場合 主な完成工事について、請負代金の額の大きい順に記載し、それに続けて、主な未成工事について、請負代金の額の大きい順に記載すること。」

経審を受けない会社にも「大きい順」は求められています。思いついた順や工期の順に並べるのは誤りです。

迷ったら、経審を受ける前提で書く

来年以降に公共工事に出る可能性があるなら、今年から経審用の書き方にしておくのが安全です。経審用の書き方は受けない会社の条件も満たすので、あとで書き直す手間がなくなります。

03

経審を受ける会社の書き方——元請7割、全体7割、未成工事

様式第二号 記載要領3(1)(括弧書きの一部を省略)

「① 元請工事(発注者から直接請け負つた建設工事をいう。以下同じ。)に係る完成工事……について、当該完成工事に係る請負代金の額……の合計額のおおむね7割を超えるところまで、請負代金の額の大きい順に記載すること(令第1条の2第1項に規定する建設工事については、10件を超えて記載することを要しない。)。……
② それに続けて、既に記載した元請工事以外の元請工事及び下請工事……に係る完成工事について、すべての完成工事に係る請負代金の額の合計額のおおむね7割を超えるところまで、請負代金の額の大きい順に記載すること(……10件を超えて記載することを要しない。)。……
③ さらに、それに続けて、主な未成工事について、請負代金の額の大きい順に記載すること。」

言いかえると、次の3段階です。

段階対象どこで止めるか
第1段元請の完成工事だけを大きい順に書いた額の累計が元請合計の7割をこえたところ
第2段まだ書いていない完成工事を、元請・下請の区別なく大きい順に第1段の分も含めた累計が完成工事全体の7割をこえたところ
第3段主な未成工事を大きい順に「主な」とだけあり、割合の定めはない
  • 原文は「おおむね7割」です。7割ちょうどで機械的に切る決まりではありません
  • 第2段に移ると、並べ直しが始まります。第2段の1件目が第1段の最後の工事より大きくても、順番の誤りではありません
  • 請負代金の合計が1,000億円を超える部分は書かなくてよいという上限もありますが、中小の会社には関係ありません
  • 工事進行基準などで収益を認識している場合は、完成工事の範囲に未成工事も含める扱いが括弧書きで定められています

関東地方整備局の手引きは、この流れを「工事経歴書の記載フロー」という図にしています。経審を受ける場合はフローに沿って作るよう案内しています。

04

軽微な工事の10件と、税込・税抜の使い分け

10件の上限がかかるのは「軽微な建設工事」だけ

記載要領の「令第1条の2第1項に規定する建設工事」は、許可がなくても請け負える軽微な建設工事のことです。

建設業法施行令 第1条の2第1項

「法第三条第一項ただし書の政令で定める軽微な建設工事は、工事一件の請負代金の額が五百万円(当該建設工事が建築一式工事である場合にあつては、千五百万円)に満たない工事又は建築一式工事のうち延べ面積が百五十平方メートルに満たない木造住宅を建設する工事とする。」

  • 500万円以上の工事は、何件になっても7割に届くまで書きます。10件で打ち切ってよいのは軽微な工事の行だけです
  • 許可事務ガイドラインは、第2段の10件に第1段で書いた軽微な工事の件数も含めるとしています。第1段で軽微な工事を3件書いたら、第2段で書ける軽微な工事はあと7件です
  • 契約を分けていても、同じ工事の完成を分割して請け負ったなら合計額で判断します(令1条の2第2項)。注文者が材料を支給したときは、その市場価格と運送賃を加えます(同3項)

判定は税込、記入は税抜

何をするとき税の扱い出どころ
軽微な工事かどうか(500万円・1,500万円)を判定する税込関東地方整備局の手引き「消費税及び地方消費税相当額を含む」
工事経歴書に金額を書く(経審を受ける場合)原則税抜・千円未満切捨て。免税事業者だった期間の扱いは行政庁で違う(東京都は税抜、大阪府は原則税込)東京都の経審申請説明書、大阪府の経営事項審査申請の手引き

たとえば税抜4,600千円の工事は、税込では5,060千円なので軽微ではありません。反対に税抜4,300千円の工事は税込4,730千円で軽微に当たります。同じ表の中で、判定と記入の基準が違うことに注意してください。

用紙の上には「税込・税抜」の欄があり、どちらで書いたかに丸を付けます(記載要領2)。経審を受ける会社は、原則として税抜で書きます。ただし免税事業者だった期間の扱いは行政庁によって違います。東京都の経審申請説明書は、免税業者なども含めて消費税抜きで千円未満を切り捨てるよう求め、税込で決算報告を出していた場合は経審のときに税抜の工事経歴書を別に作るよう案内しています。一方、大阪府の経営事項審査申請の手引き(令和8年7月改訂版)は、決算変更届を消費税抜きで作るとしつつ「免税事業者であった期間は原則消費税込み」とし、免税だった期間の工事経歴書は税込みの完成工事高で作るよう求めています。

05

記入の手順——架空の電気工事会社で書いてみる

ここでは「有限会社ひかり電設」という架空の会社で、1枚書いてみます。前提は次のとおりです。

  • 電気工事業の知事許可だけを持つ。6月30日決算。経審を受ける
  • 対象は第15期(令和7年7月1日〜令和8年6月30日)。決算変更届の期限は令和8年10月31日
  • この期に完成した電気工事は42件・96,000千円(税抜)。そのうち元請は40,000千円
1
業種ごとに用紙を分け、税抜に丸を付ける
「(建設工事の種類)」に電気と書き、「税込・税抜」の税抜に丸。許可業種が複数あれば業種の数だけ作ります(記載要領1・2)
2
完成工事を一覧にして、元請と下請に分ける
会計ソフトや工事台帳から、この期に完成した42件を抜き出し、元請(発注者から直接受けた工事)と下請に印を付けます。決算日にまだ終わっていない工事は別に控えます
3
7割の目標額を2つ計算する
元請合計40,000千円の7割は28,000千円。完成工事全体96,000千円の7割は67,200千円です
4
第1段:元請だけを大きい順に書き、28,000千円をこえたら止める
市立小学校の照明工事18,200千円、物流センターの受変電設備12,600千円の2件で累計30,800千円。ここで第1段は終わりです
5
第2段:残りを元請・下請まとめて大きい順に書き、67,200千円をこえたら止める
マンション新築の電気設備21,500千円(累計52,300)、病院改修の幹線設備9,800千円(62,100)、工場増設の動力設備6,400千円(68,500)。3件で超えたので止めます
6
各行の欄を埋める
注文者、元請・下請の別、JVの別、工事名、工事現場の都道府県と市区町村、配置技術者と主任・監理の別(レ印)、請負代金、着工と完成の年月。金額は千円単位です
7
小計を書く
このページに書いた完成工事の件数と金額です。5件・68,500千円、うち元請30,800千円(記載要領11)
8
最終ページに合計を書く
書かなかった工事も含めた、この業種の完成工事すべてです。42件・96,000千円、うち元請40,000千円(記載要領12)
9
第3段:主な未成工事を大きい順に続ける
県営住宅の共用部照明改修(元請・11,000千円、令和8年5月着工、11月完成予定)など。未成工事は小計・合計に入れません
10
様式第三号と突き合わせる
合計の96,000千円と元請40,000千円が、様式第三号の第15期・電気工事の欄と同じになっているかを確かめます(第7節)

できあがりのイメージ(完成工事の部分)

注文者元請・下請工事名配置技術者請負代金(千円)
△△市元請市立小学校体育館照明LED化工事山川 一郎/川口 二郎(途中交代。主任)18,200第1段
(株)P物流元請P物流センター受変電設備更新工事海野 三郎(主任)12,600第1段
Q建設(株)下請Rマンション新築工事のうち電気設備工事山川 一郎(主任)21,500第2段
S電工(株)下請T病院改修工事のうち幹線設備工事海野 三郎(主任)9,800第2段
U工業(株)下請V工場増設工事のうち動力設備工事川口 二郎(主任)6,400第2段
小計5件 うち元請 30,80068,500
合計42件 うち元請 40,00096,000

第2段の1件目(21,500千円)が第1段の2件目(12,600千円)より大きいのは、段が変わって並べ直したためです。元請の税抜4,300千円の小さな工事は、第2段で6,400千円まで書いた時点で7割をこえたので、書かずに済んでいます。

06

配置技術者・注文者・JVの欄

配置技術者は交代した人も全員

様式第二号 記載要領8

「『配置技術者』の欄は、完成工事について、法第26条第1項又は第2項の規定により各工事現場に置かれた技術者の氏名及び主任技術者又は監理技術者の別を記載すること。また、当該工事の施工中に配置技術者の変更があつた場合には、変更前の者も含むすべての者を記載すること。監理技術者補佐を置いた場合又は特定専門工事に該当し主任技術者を配置しなかつた場合はその旨を記載すること。

この欄は、決算の時期になってから調べ直すのが難しい欄です。工事が終わるたびに、誰が現場の技術者だったかを台帳に残しておくと、決算変更届の作業がずっと楽になります。

注文者と工事名で個人を特定させない

注文者が個人の場合は「A」「A邸改修工事」のように書き、名前が分からないようにします(記載要領6)。関東地方整備局の手引きは、姓だけの記載も認めないとしています。工事経歴書は閲覧所で公開されるためです。

下請工事の注文者は、直接の注文者

下請で受けた工事は、施主ではなく自社に直接発注した元請業者などの名前を書き、工事名も下請工事の名称にします(記載要領4)。

JVと、PC・法面処理・鋼橋上部の欄

  • 共同企業体で行った工事は「JV」と書き(記載要領7)、請負代金は全体の額に出資割合を掛けた額か、分担した工事の額にします(記載要領9)
  • 土木一式・とび・土工・コンクリート・鋼構造物の工事経歴書では、プレストレストコンクリート、法面処理、鋼橋上部に当たる工事の金額を別の欄に書きます(記載要領10)
07

合計欄を、様式第三号と経審の完成工事高に合わせる

工事経歴書の合計は、同じ封筒に入る様式第三号(直前3年の各事業年度における工事施工金額)と、経審の申請書の工事種類別完成工事高につながっています。

書類ひかり電設の第15期・電気工事
工事経歴書の合計96,000千円(うち元請40,000千円)
様式第三号の「計」元請 公共21,000+民間19,000、下請56,000、計96,000千円
経審の工事種類別完成工事高電気 96,000千円、元請完成工事高 40,000千円

東京都の経審申請説明書は、業種ごとの完成工事高と元請完成工事高が、様式第三号と工事経歴書の合計に一致すると明記し、事前に確かめるよう求めています。数字がずれていると、経審の窓口で手続きが止まります。

様式第三号の書き方の要点(全国共通)

  • 申請・届出の日の直前3年の各事業年度に完成した工事を書く(記載要領1)
  • 許可業種ごとに列を分け、許可のない建設工事は「その他の建設工事の施工金額」に書く(記載要領3)
  • 元請は公共と民間に分ける。公共は国・地方公共団体・公共法人などが注文者の工事(記載要領5)
  • 金額は千円単位。実績のない欄は空けずに「0」と書く(記載要領4・7)

ひかり電設が許可のない種類の工事を1,500千円行っていたなら、「その他」に1,500千円、合計は97,500千円になります。この合計が損益計算書の完成工事高と合っているかも確かめてください。東京都の手引きの記入例はこの一致を求めています(ほかの行政庁は手引きで確認)。

08

行政庁ごとに違うところ

記載要領で決まっていることは全国共通ですが、次の点は行政庁の運用です。

確かめること
未成工事を別の用紙に分けるか関東地方整備局の手引きは「別葉」で作るよう書いています。記載要領は「それに続けて」書くとしているだけで、別葉は運用です
工事の実績がないとき関東地方整備局は「受注実績なし。」と書くよう案内しています。東京都は、実績のない業種の分は1枚にまとめて作るよう求めています
業種の振り分け電気工事か電気通信工事か、とび・土工か土木一式か、など。例示のある手引きとない手引きがあります
軽微な工事をまとめて1行にできるか扱いが分かれます
経審で確認する契約書の件数東京都は業種ごとに記入順で上から3件の契約書などを確認資料にしています
業種の振り分けは、出す前に聞く

どの業種の工事として書くかは、決算変更届を出したあとでは直しにくい部分です。迷う工事があれば、出す前に許可行政庁に確かめてください。経審では一部の専門工事の完成工事高を一式工事などへ振り替える扱いもありますが、これは経審の申請のときの話です(→ 経審)。

09

よくある質問

免税事業者ですが、税抜で書く必要がありますか
行政庁によって違います。東京都は免税業者も税抜で、税込で決算報告を出していた場合は、経審の申請のときに税抜の工事経歴書と工事施工金額を別に作って出すよう求めています。大阪府は、免税事業者だった期間は原則税込で作るよう求めています(経営事項審査申請の手引き 令和8年7月改訂版)。ほかの行政庁の方は手引きで確かめてください。経審を受けないなら、税込・税抜のどちらかに丸を付けて統一してください。
千円未満は四捨五入ですか
東京都の経審申請説明書は千円未満の切捨てとしています。全業種・全書類で同じ処理にそろえてください。
7割に届く前に、軽微な工事ばかりになってしまいました
軽微な工事は、第1段と第2段を通じて10件まで書けば足ります。軽微でない工事(建築一式なら1,500万円以上、それ以外は500万円以上)が残っていれば、それは7割に届くまで書きます。ただし建築一式工事のうち延べ面積150㎡未満の木造住宅を建てる工事は、金額にかかわらず軽微な工事に当たります(令1条の2第1項)。
年度をまたいだ工事はいつの工事経歴書に書きますか
完成した事業年度の工事経歴書に完成工事として書きます。決算日にまだ終わっていなければ、その年は未成工事として書きます。
間違いに気づいたら、どう直しますか
訂正の届出が必要になります。関東地方整備局の手引きは、訂正したページだけでなく、直した業種の工事経歴書を一式出し直すよう求めています。書式は行政庁ごとに違うので、窓口で確認してください。
経審では、工事経歴書に書いた工事の契約書を見せる必要がありますか
あります。東京都は、審査する業種ごとに工事経歴書に書いた順で上から3件の契約書類の写しを確認します(経営事項審査申請説明書 令和8年9月版)。使える書類は、①契約書、②契約書がなければ注文書と請書(工事名・工事内容・請負金額・工期・契約者名の入ったもの)、③それもなければ請求書と入金額の分かる預金通帳など、の順です。請書しかないときや注文者の押印がないときは入金の資料も付け、追加・変更工事があればその分の契約書類も要ります。疑問があれば3件を超えて求められることもあります。件数や書類の種類は行政庁で違うので、提出先の手引きで確かめてください。決算の時期に契約書類をそろえておくと、経審で慌てずに済みます。
許可を受けていない業種の工事(その他の工事)は、どこに書きますか
工事経歴書は許可業種ごとに作るので、許可のない業種の工事は様式第三号の「その他の建設工事の施工金額」の欄に金額を書きます(様式第三号 記載要領3)。建設業ではない事業の売上(兼業売上)はこの欄に入れません。なお、許可のない業種で請け負えるのは軽微な工事(1件500万円未満、建築一式なら1,500万円未満など)だけです(法3条1項、令1条の2)。その他の工事について工事経歴書を別に付けるか、どうまとめるかは運用が分かれるので、提出先の手引きで確かめてください。
単価契約の工事は、請負代金の欄にいくらと書きますか
東京都の経審申請説明書は、元請の公共工事の単価契約について、契約書には発注の限度額しか書かれていないことから、その契約で自社の決算期内に売上として計上した請求額の累計を1件分の請負代金として書くよう案内しています。請求書などが4件以上になるときは一覧表を作り、累計額が分かるようにします。ほかの行政庁の扱いは手引きで確かめてください。