Financial Analysis (Y)
経営状況分析(Y)——8つの指標と計算式を、通達と告示で確かめる
経審の5つの評点のうち、Yだけは役所ではない民間の機関が出します。何を出して、どの数字がどう点になるのかを、国の通達と告示の原文に沿って整理します。
Y(経営状況の評点)は、国土交通大臣の登録を受けた「登録経営状況分析機関」に申し込んで出してもらいます。手数料・締切・申し込み方は機関ごとです。決算書から8つの指標を計算し、告示の係数で経営状況点数Aを出し、Y=167.3×A+583(小数点以下四捨五入、0未満は0)で評点にします。最高は1,595点。どの指標にも上限と下限があり、端に着いた指標はそれ以上動きません。
Yは「役所ではない機関」に申し込みます
経営事項審査(→ 経審とは)は2段に分かれていて、財務を見る経営状況分析だけは、許可行政庁ではなく民間の機関が担当します。
「前条第二項第一号に掲げる事項の分析(以下「経営状況分析」という。)については、……国土交通大臣の登録を受けた者(以下「登録経営状況分析機関」という。)が行うものとする。」
- どこに出すか……登録経営状況分析機関のどれか1つ。一覧は国土交通省のウェブサイトで公表されています。県の手引きにも載っていますが、社名や所在地が古いままのことがあるので、国土交通省の一覧で確かめるのが確実です
- いつ・どうやって出すか……機関が申請の時期と方法を決めて公示し、申請者はその公示に従って出します(建設業法施行規則第19条の2)
- いくらかかるか……料金は各機関が「経営状況分析規程」で定め、国土交通大臣に届け出ています(法第27条の32が準用する第26条の12、規則第21条の7)。役所の手数料表には載っていません。東京都の説明書も、分析の手数料欄は「登録経営状況分析機関が定める金額」としています
- 何日かかるか……これも機関ごとです。申し込む機関のウェブサイトで確かめてください
省令は、分析機関が国土交通大臣の定める項目と基準に従い、電子計算機とプログラムで数値を算出することを求めています(建設業法施行規則第21条の6第1号)。同じ決算書なら、どこに出しても同じYになります。機関選びは点数の話ではなく、料金・速さ・使いやすさの話です。
分析機関は、自ら申請に関わった場合など、公正な分析に支障があるおそれのある案件を扱わないことになっています(規則第21条の6第5号)。
申し込みに出すもの
分析の申請書(様式第25号の11)に、直前3年分の財務諸表を付けます(規則第19条の4第1項)。
| 申請者 | 付けるもの |
|---|---|
| 法人 | 3期分の貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、注記表(規則の様式第15号から第17号の2まで) |
| 個人 | 3期分の貸借対照表と損益計算書(規則の様式第18号と第19号) |
| 建設業以外の事業も営む者 | 上に加えて、直前3年の兼業事業の売上原価報告書(様式第25号の12) |
| 有価証券報告書を出す大会社 | 連結の財務諸表(連結キャッシュ・フロー計算書を含む) |
同じ機関にすでに出してあって内容が変わっていない書類は、添付を省略できます(規則第19条の4第2項)。毎年同じ機関に出していれば、2年目からは新しい期の分が中心になります。機関を替えると、改めて3年分をそろえることになるので注意してください。
分析に出す財務諸表と、許可行政庁に出した決算変更届の財務諸表が食い違っていると、あとの経営規模等評価で問題になります。両方を同じ数字でそろえるのが大前提です。
結果は「経営状況分析結果通知書」で届きます
分析が終わると、機関から通知書(様式第25号の13)が届きます(法第27条の25、規則第19条の5)。この通知書は、許可行政庁にP(総合評定値)を請求するときに添付する書類です(規則第21条の2第2項)。東京都・大阪府は原本の提出を求めています。電子申請(JCIP)では、通知書にある16桁の認証キーを入力する方法もあります。
8つの指標——何をどう計算するか
指標の定義は、国の通達「経営事項審査の事務取扱いについて」の5(1)〜(8)にあります。番号の順は資料によって入れ替わることがあるので、このページでは告示の算式が使う記号 X1〜X8 で呼びます(完成工事高のX1とは別物です)。
| 記号・指標 | 計算のしかた(要点) | 良い向き |
|---|---|---|
| X1 純支払利息比率 | (支払利息−受取利息配当金)÷ 売上高(完成工事高+兼業売上高)。百分比 | 小さいほど良い |
| X2 負債回転期間 | (流動負債+固定負債)÷ 1か月あたり売上高(売上高÷12)。単位は月 | 小さいほど良い |
| X3 総資本売上総利益率 | 売上総利益 ÷ 総資本(今期末と前期末の平均)。百分比。平均が3,000万円に満たないときは3,000万円とみなす | 大きいほど良い |
| X4 売上高経常利益率 | 経常利益 ÷ 売上高。百分比(個人は事業主利益) | 大きいほど良い |
| X5 自己資本対固定資産比率 | 自己資本 ÷ 固定資産。百分比 | 大きいほど良い |
| X6 自己資本比率 | 自己資本 ÷ 総資本。百分比 | 大きいほど良い |
| X7 営業キャッシュ・フロー | 経常利益+減価償却実施額−法人税・住民税・事業税に、引当金・売掛債権・仕入債務・棚卸資産・受入金の増減を加減し、1億で割った値。今期と前期の2年平均 | 大きいほど良い |
| X8 利益剰余金 | 利益剰余金合計(個人は純資産合計)を1億で割った値 | 大きいほど良い |
X7とX8は億円単位です。たとえば利益剰余金が5,000万円なら0.5になります。
見ている時期が指標ごとに違います
- 1年間の数字を使うもの……売上高、支払利息、売上総利益、経常利益(X1〜X4の分子・分母)
- 決算日の残高を使うもの……負債、自己資本、固定資産、総資本、利益剰余金
- 前の期も効くもの……X3の総資本(2期末の平均)と、X7(2年平均)。今期だけ改善しても、効き目は半分ほどになります
指標ごとの上限と下限
8つの指標には、すべて上限と下限があります。計算した値が幅の外に出たら、端の値として扱われます。
| 指標 | 有利な端 | 上限 | 下限 |
|---|---|---|---|
| X1 純支払利息比率 | ▲0.3% | 5.1% | ▲0.3% |
| X2 負債回転期間 | 0.9 | 18.0 | 0.9 |
| X3 総資本売上総利益率 | 63.6% | 63.6% | 6.5% |
| X4 売上高経常利益率 | 5.1% | 5.1% | ▲8.5% |
| X5 自己資本対固定資産比率 | 350.0% | 350.0% | ▲76.5% |
| X6 自己資本比率 | 68.5% | 68.5% | ▲68.6% |
| X7 営業キャッシュ・フロー(2年平均、単位は億円) | 15.0 | 15.0 | ▲10.0 |
| X8 利益剰余金(単位は億円) | 100.0 | 100.0 | ▲3.0 |
出典:経営事項審査の事務取扱いについて 5(1)〜(8)。端数は指標ごとに決められた桁で四捨五入してから当てはめます。
「ただし、当該数値が68.5%を超える場合は68.5%と、マイナス68.6%に満たない場合はマイナス68.6%とみなす。」
ここから言えることは2つです。
- 天井に着いた指標は、いくら良くしても点が増えない……自己資本比率が80%の会社も68.5%の会社も、この指標では同じ扱いです
- 床に着いた指標は、それ以上は下がらない……債務超過が深くても、自己資本比率は▲68.6%で止まります
Yを良くしたいときは、まずいま端に着いていない指標がどれかを見るのが近道です。
AとYの計算式
計算は2段です。8つの指標から経営状況点数(A)を出し、Aから経営状況の評点(Y)を出します。
経営状況点数(A)=
-0.4650×X1-0.0508×X2+0.0264×X3+0.0277×X4+0.0011×X5+0.0089×X6+0.0818×X7+0.0172×X8+0.1906
告示の付録第一の算式で出した点数(小数点以下2位未満を四捨五入。「経営状況点数」)をもとに、「経営状況の評点(小数点以下の端数があるときは、これを四捨五入する。)を求める。ただし、経営状況の評点が0に満たない場合は0とみなす。」
① 経営状況の評点=167.3×A+583
Aは小数点以下2位まで(3位を四捨五入)
マイナスになったら0点
計算してみる(数字は説明用の仮のもの)
| 指標 | 仮の値 | 係数×値 |
|---|---|---|
| X1 純支払利息比率 | 1.0% | −0.4650 |
| X2 負債回転期間 | 4.0か月 | −0.2032 |
| X3 総資本売上総利益率 | 25.0% | +0.6600 |
| X4 売上高経常利益率 | 2.0% | +0.0554 |
| X5 自己資本対固定資産比率 | 150.0% | +0.1650 |
| X6 自己資本比率 | 30.0% | +0.2670 |
| X7 営業キャッシュ・フロー | 0.5(5,000万円) | +0.0409 |
| X8 利益剰余金 | 1.0(1億円) | +0.0172 |
合計に定数0.1906を足すと A=0.7279 → 0.73。Y=167.3×0.73+583=705.129 → 705点です。
最高1,595点・最低0点になる理由
8指標をすべて有利な端に置くと、A=6.046…→6.05、Y=167.3×6.05+583=1,595.165で1,595点になります。すべて不利な端に置くとYはマイナスになり、ただし書きで0点です。国土交通省が公表しているYの最高点・最低点(1,595点/0点)と一致します。
どの指標がYに効くのか
係数の大きさだけを比べると判断を誤ります。係数 × その指標が動ける幅(上限と下限の差)で比べると、Aへの影響の大きさが見えます。
| 指標 | 動ける幅 | 係数 | Aへの影響の最大 |
|---|---|---|---|
| X1 純支払利息比率 | 5.4 | −0.4650 | 2.511 |
| X7 営業キャッシュ・フロー | 25.0 | +0.0818 | 2.045 |
| X8 利益剰余金 | 103.0 | +0.0172 | 1.772 |
| X3 総資本売上総利益率 | 57.1 | +0.0264 | 1.507 |
| X6 自己資本比率 | 137.1 | +0.0089 | 1.220 |
| X2 負債回転期間 | 17.1 | −0.0508 | 0.869 |
| X5 自己資本対固定資産比率 | 426.5 | +0.0011 | 0.469 |
| X4 売上高経常利益率 | 13.6 | +0.0277 | 0.377 |
借入の利息負担(X1)と、営業で生んだ現金(X7)の2つで、Aが動ける幅の4割を超えます。Aが1違うとYは167.3点違い、Pの重み0.2を掛けるとPで約33点の差になります。
申請者がAを手で計算して出す必要はありません。この表は「どこを改善すると効きやすいか」の目安です。決算の組み方を変える判断は、顧問税理士と相談してください。Pへの効き方は P点試算 でも確かめられます。
つまずきやすい点
- 事業年度が12か月に満たない期……設立1期目などで審査対象の期が12か月未満だと、X1・X2は最大値、ほかの6つは最小値、つまりすべて不利な端で計算されます(事務取扱い 5 末尾)。事業年度の変更や組織変更の登記、合併などの場合は、年換算する別の扱いがあります
- 小さい会社のX3……総資本の平均が3,000万円未満でも3,000万円として割るため、この指標は小さい会社に不利に出ます
- 結果に不服があっても再審査の条文がない……建設業法第27条の28と規則第20条の再審査は経営規模等評価の話で、分析の結果は対象外です。決算書に誤りがあったなら、正しい書類で分析を申請し直すことになります。扱いは機関に確かめてください
- 分析が遅れると経審全体が遅れる……Pの請求には分析結果の通知書が要ります。東京都は、通知書がないと審査を中止して予約を取り直しになると案内しています。決算書ができたらすぐ申し込むのが安全です
- 電子申請(JCIP)では出せない……JCIPで申請できるのは経営規模等評価とPの請求です。分析は機関の決めた方法で、その機関に出します
よくある質問
| Y | 必要なA | そのときのY |
|---|---|---|
| 600点 | 0.10 | 599.73 → 600 |
| 700点 | 0.70 | 700.11 → 700 |
| 800点 | 1.30 | 800.49 → 800 |
| 900点 | 1.90 | 900.87 → 901(1.89なら899) |
| 1,000点 | 2.49 | 999.58 → 1,000 |